
東和薬品や京都大学iPS細胞研究所(CiRA)などは3日、遺伝子に特徴がある「家族性アルツハイマー病」の患者にiPS細胞を活用して見つけた治療薬候補を投与する最終段階の臨床試験(治験)を5月に始めたと発表した。京大などが第1段階の治験を22年に終え、安全性を確認していた。今回の治験は2028年3月までに終え、承認申請をめざす。
対象となるのは「プレセニリン1」という遺伝子に変異があるタイプのアルツハイマー病患者。アルツハイマー病は特定の遺伝子変異をもつ家族性といわれる患者が1%未満おり、そのうちプレセニリン1に変異があるタイプは国内に推定100人前後いる。平均発症年齢は40歳代と、比較的若い人が発症する。
治験は三重大学病院など全国の医療機関で実施する。パーキンソン病などの治療薬「ブロモクリプチン」と偽薬(プラセボ)を患者に投与して有効性を調べる。治験に参加する患者数は24人を目標とする。京大や三重大学が実施した第1段階の治験では安全性に加え、認知機能の低下などが抑えられる傾向が確認できたという。
ブロモクリプチンは既に東和薬品などが後発薬を発売しており、家族性アルツハイマー病に適応が広がれば一から開発するよりも安く実用化できる。同治療薬はCiRAの井上治久教授らが、iPS細胞で作った脳神経細胞の組織に承認済みの薬を投与し効能を調べる「iPS創薬」という手法を活用して、家族性アルツハイマー病に効果がある可能性を見いだした。
京都市内で開いた記者会見で東和薬品の吉田逸郎社長は「豊富な既存薬の資産を活用し、新たな病気に対する適応を広げていくのは後発薬企業としての務めだ。今後も希少疾患や特殊疾患の治療法開発に貢献したい」と述べた。